自主制作アニメ講座:アニメの製作工程について

2013年10月追記


こちらの記事は、現では使い物にならない古い技術を多々含みます。

しかし、大まかな流れは変わっていないため、細かい点を現代の形式に変更して残しておきます。

アニメの制作現場のメイキングや資料などを見ていてもどれが何か、ピンとこない事があります。

大雑把に書くとアニメはこのような工程で作られています。

 


脚本(プロットを基に台詞等を書きこむ作業)

絵コンテ

レイアウト→背景(作画と同時進行)


作画(原画→作画監督修正→動画)

仕上げ(色塗り)

撮影(カットごとに絵を繋げて動画にする作業)

編集(撮影で上がった動画を繋げる作業)

アフレコ(絵コンテや作画の段階で仮編集をしてする場合がほとんどですが)

 

本当はこれが全部できればいいのですが、自主制作ではもっと工程が減ります。

それでは最低限まで減らしてみたいと思います。(ここではTVアニメ風の物を作る前提です。)

 

プロット(大雑把なあらすじ)

絵コンテ

作画(いきなり動画を描く)

仕上げ(色塗り)

撮影(カットごとに絵を繋げて動画にする作業)

編集(撮影で上がった動画を繋げる作業)

アフレコ

自主制作でCGアニメを作りたい方も多いと思われますので、後でCGについても書こうと思います。’(2013年追記:CGアニメに関しては、専門外なので私から説明する予定はありません。)

 

プロットからいきなり絵コンテに飛んでいますが、プロの現場でもまれにあるそうですし、名作といわれるアニメ映画に、プロットからいきなり絵コンテという物も多いです。1部の例ですが、以下の作品がそうだったと思います。

・クレヨンしんちゃん劇場版モーレツオトナ帝国の逆襲(10年以上前のクレしん映画は脚本がないそうです)

・うる星やつら2ビューティフルドリーマー(脚本をボツにして絵コンテで一気に変えたようです)

・ジブリの宮崎作品全般(イメージイラストを大量に描いて頭の中でまとめてコンテにするようです)

といった具合に脚本がない作品に割と名作と呼ばれるアニメが多いのが個人的に気になるところ。

オトナ帝国の原監督なんかは脚本があるとむしろコンテで苦労するらしいです。

 

 個人的な考えですが、やはり動く絵である以上、字を基に描くよりは最初から絵を描いた方がアニメーションとして面白い物になるように思えます。

それに字で描くより断然最初から絵の方がイメージがまとまりやすいように思えます。

そして脚本だと何度も書き直してしまったりしているうちに、自分で面白いかどうか分からなくなる事が多いです。絵コンテで修正せずに作ると、観客により近い視線で作品が作れるというメリットがあるかと思います。

あくまでも個人的な考えですのでこちらも参考程度にどうぞ。

 

 

少々話がそれてしまいましたが、具体的にアニメ制作に使う物がどんなものなのか説明させていただきます。

 

●プロット

大雑把な粗筋です。

wordやopenoffice等で綺麗に作ってもいいですが、私はWindowsに最初から絶対入っているメモ帳で書いてます。

自分で脚本やコンテを描く場合、自分にわかればいい内容で十分です

箇条書きでも小説風でも企画書風でも構いません。

 

台本やプロットは人に渡す場合だと、舞台設定、登場人物などを書いておくと読みやすいです。

word等で描く場合は「Word97~2003文章」形式で保存する事をお勧めします。Microsoft以外のオフィスや古いバージョンを使っている人にも互換性の高いこの形式をお勧めします(2011年現在)

●脚本

一人で作るときは、自分で読めれば十分です。

映像化するときに無理のない物語を描くのがポイント

 

●絵コンテ

簡単に言うとアニメの設計図です。

 

カット番号 画 音声 描写の指示 時間

 

に分かれている物が多いです。

私が作った絵コンテ用紙は、写植の関係上、音声と描写指示が一緒になっています。

「映画でよく聞くシーン○○とかは?」という疑問ですが、アニメではシーン番号より、カット番号で物事を考えていく事の方が多いです。

コンテの書き方について細かいことはまた別の機会にお話しします

 

●レイアウト

TV画面に映る絵の構成を考えるときに使う紙です。

背景と人物をラフな感じに書いた紙です。

近年では3DCGを使っている事もあるようです。(3Dをそのまま使う場合や、3Dをトレースして背景画を描く場合等色々あるそうです)

 

アナログ放送時代は画面の端が15%前後切り取られていたため、安全フレームというものが存在していましたが、動画サイトやHDテレビなどで観賞することを前提に考える場合、あまり考える必要はないかと思います

 

レイアウトは自主制作では使用しない場合も多いです。

私が一人で描くときには正直必要ありません。


作画監督が全カットのレイアウトを描き、複数人で描くときに絵を統一するのには便利です。

 ●作画

 

これを見ている人の多分1~2番目に気になる部分だと思います。かつて私はそうでした。

 

まずはよく聞く「原画」と「動画」という単語の意味について。

 

日本のアニメは1秒に8枚の絵が映っている場合がほとんどですが、10秒間動きっぱなしの戦闘シーンなんかがあった時に、80枚を一人で描くのは到底至難の業です。

アニメスタッフの中では絵のうまい方が限られています。

ただ、そこまで上手くなくてもトレースならそれなり出来ると言う人もいます。

なので、30枚の全体的な動きの絵を上手い人が描いた後、そこそそ上手い人がその絵と絵の中間の絵を描けばクオリティを落とさずに1人で描くより少ない力でアニメが作れるわけです。

 

簡単に説明すると

その上手い人の絵を「原画」

中間で原画を補完する絵を「動画」

といいます。

 

テレビアニメなど商業作品の場合、

原画

作画監督修正

(作画監督が別紙に原画の絵の修正指示を描きます)

動画

(作画監督と原画の絵を基に中間の絵(中割といいます)を描いていく。また、原画と作画監督の絵を整頓して、色塗りをしやすい絵にトレースする作業(クリンナップといいます)も動画の仕事です。)


…といった感じの物が作画となっています。単に「作画」というと、大抵は作画監督の絵か原画の事を指します。

 

ただ、自主制作で初めに作る場合、この方法を実践するのは難しいです。

現状として日本のアニメの「動画」の6割くらいは労働賃金の安い韓国や中国でやっていますし、流れ作業を考慮して作り出された商業アニメと個人制作の自主制作アニメでは、わけが違います。

 

私の知人の某らっパル氏は絵コンテを描かずパラパラ漫画の容量で作画とクリンナップをしていました。

私の周りではパラパラ漫画の要領で順に絵を描いて行く人が多いです。

 

また、多少邪道と思われるかもしれませんが、ロトスコープという方法があります。(要は実写のトレースです)

我流ですがロトスコープの流れは

1 コンテの動きの通りに人間を使ってデジカメで撮影をする

2 その撮影した素材を1秒間が8枚になるように画像に変換する

3 動画の主に動いている部分以外は止め絵でも大丈夫なので消す

4 2の画像を参考に(或いはなぞって)キャラクターを描いていく

 

といった感じです。

なぞるより参考に書いた方がアニメ的な絵と動きになります

最初のうちは何枚描いてどんな風に動くかわからなかったり、人間の動きそのものが解らなかったりするので、お勧めです。

自主アニメ初心者の場合、こちらの方がクオリティが上がることはたぶん間違いないでしょう。

私もクオリティの高いアニメを作りたい時は、私の技術不足の補完のため、今でも使っています。

ただ、アニメ的な動きの面白さを追求したい方にはあまりお勧めできません。


ペンタブ等でデジタルで描いた方がいいのか

紙に描いた方がいいのか

迷っている人も多いと思いますが、正直これに関しては人によって得意な部分が違うと思うので、どちらとも言えません。

ただデジタル作画の場合、アナログより何度も修正してしまい、時間がかかる人が多いようです。

どちらで作画するかプロの世界でも、現場によって違うようです。

 

あくまでも私的な意見ですが、パスツール等で描いた絵の方が近年好かれる傾向にありますが、単純な絵の場合、映像密度が減ってあまり好きにはなれません。

 

フィルム撮影時代のセルアニメの方が線がガタガタする鉛筆線や色むらがある塗りの方が手作り感というか作り手の血と汗と涙が見えるようで好きです。

個人制作でハイクオリティということで話題になった新海監督の「ほしのこえ」もアナログ(鉛筆)で、それもかなり太めの線で描いていましたね。

 

ソフトに関してはRETAS!というソフトのペンツールがアニメ向きの線を描けるように作ってあり「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズなんかでも使われていますが、ペンツールに関しては同じcelsys社のIllustStudioの方が同じ機能を備えているうえ、それ以上に豊富なバリエーションの線がひけます。

2013年追記:RETASは専門的な知識が豊富に必要なため、あまり自主制作ではおすすめできません。

イラストスタジオは現代はCLIPSTUDIOという名称で販売されています

 

画像のサイズですが、私は1280×720で描いています。(2011年現在)2013年追記:今は1920×1080以上が主流です

YOUTUBE高画質で丁度よく、DVDに収録した時に過去のテレビアニメより大きいサイズで描いているため、かなり高画質に見えますが、フルハイビジョンで制作したい方は1920×1080pixか、もう少し大きい方がいいと思います(非常に容量を食うため、スペックに自信のない方にはあまりお勧めしません)。

 

 

最後に仕上げについて

仕上げとは色塗りの事です。

10年前からデジタル移行が始まって多分絵具でぬろうと思う人はいないと思うのでデジタルの色塗りについて書きたいと思います。

(※2015年追記絵の具で塗ってる人、いました。またいつか追記します。)

よく業界のアニメ絵では赤や青の線で色分けがされている動画を見ます。

あの線は色鉛筆で描かれている事が大半で、RETAS!というソフトで色を塗ると簡単に綺麗に塗る事が出来るようになっています。

RETASで色を塗ると、隙間やはみ出た部分、細かい部分なんかもAdobe社のPhotoShop等に比べ、簡単に塗る事が出来、お勧めです。

ただ、RETASは業界で使うために作られたソフトで、初心者には覚えなくてはならない知識がかなり多くあります。

 

私は、先ほども書いたIllustStudioの色塗りツールを使って塗っています。

色鉛筆の色分けが出来ない事を除けば(多分慣れてる人はアクション等で何とか出来ると思います)、RETAS!とほとんど変わらない豊富な色塗りツールが完備されています。

私はアナログで線画を描いてデジタルで塗り分け線を描いています。

 

今回はおまけに某アニメ会社のセル画時代のカラーチャートを再現した物を貼っておきます。jpgなのは色を安定させないためです。

 

彩色は目指している方向のアニメのキャプチャ画像等の色をスポイトツールで吸ってどんな色なのかを確認しているうちに安定したアニメらしい色が作れるようになってきます

まとめというか後書き

 

本当はもっと簡単な説明をするつもりだったのですが、気がついたら物凄い長文になっていました^^;

読むのが辛かったかもしれませんが申し訳ありません。

前述で3Dについても書くと言いましたが、またの機会にさせていただきます。

そのうち全体的にもっと細かく解説をして行こうと思いますので、個々についてはもうしばらくお待ちください。

大分簡単アニメから趣旨がずれて来ましたがこれから自主制作アニメを始める人たちに少しでも力になればと思います。

 

また、質問感想等コメントや掲示板に書いてもらえると、今後の参考になりますので気軽におねがいします。

 

最後に注意として、あくまでも独学で学んできた私のやり方なので、もっと効率的な方法や、邪道と思われるような制作方法があるかもしれませんので、あくまでも参考までにどうぞ。

コメントをお書きください

コメント: 4
  • #1

    にこみ (日曜日, 08 7月 2012 16:16)

    講座のアップありがとうございます

    自分は将来アニメーション監督を目指しているんですが、まずは自主制作アニメを作ってアニメへの経験を深めたいと思って拝見させて貰いました。
    とても分かりやすいです!
    まだ何から手をつけていいかわからなかったのでw、
    早速準備にかかりたいと思います。
    何か制作途中困ったら質問いいでしょうか。
    いい作品が作れるよう頑張ります!

  • #2

    ピエール伊藤 (日曜日, 08 7月 2012 22:10)

    コメントありがとうございます!

    自主制作アニメから、アニメ監督になる人も多いので、大切なことかと思います。

    この講座も更新スピードが遅く、とても不完全ですが、少しでもお役に立てればと思います!

    質問お待ちしております!

  • #3

    ただりん (月曜日, 16 11月 2015 07:42)

    高校生です!本気でアニメを作りたいと考え、
    このサイトに辿り着きました。非常にわかりやすく、参考になります❗️
    手描き作画で製作しようと思っているのですが、動画をスキャンした後、どのソフトを使って仕上げと編集と撮影、演出(効果音とか声とか...)すればいいのかよくわかりません。背景も手描きでしたいと思っているので、それらを合成して編集できるソフトを探しています。LETAS!やCLIPSTUDIOがいいのでしょうか?
    アドバイスをいただければ幸いです!

  • #4

    おかゆ (月曜日, 17 8月 2020 00:45)

    とても勉強になりました!これからがんばってみようと思います。
    記事を書いて下さりありがとうございました!

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